2020年を迎えました。新年を迎えると、決まって、その年の展望を求められるものですが、ネットワーク監視分野担当の私にもその課題が与えられました。クリスタルボールの塵を払って、ITとエンタープライズテクノロジーの世界に変化をもたらすトレンド、脅威、機会などについて、考えてみたいと思います。
IT 分野においては、5年後は言うまでもなく、5日後のことさえ正確に予測することは困難です。もし、本当に、複数年にわたる IT トレンドを正確に予測できる人がいたとしたら、その人はとてつもなく裕福なはずで、予測のために使う情報を誰にでもアクセスできるよう公開することはないでしょう。私は、マサチューセッツ州のオフィスパークの私のデスクでこのブログを書いており、アドリア海で自家用ヨットに乗って贅沢をしているスーパーリッチな人間ではありません。一般的な業界人として展望はしてみますが、私がネットワークのノストラダムスではないことは、是非ご理解願いたいものです。
とはいえ、空飛ぶ(または自動化された)車についてであれ、仕事をする環境がどう変わっていくかについてであれ、未来についてあれこれ空想してみるのは楽しいものです。もちろん、重要なことは、これからの1年の間に企業のビジネスに影響を与えるようなトレンドを、できる限り適切に予測して、しっかりと変化に備えられるようにすることです。ノストラダムスはそういった視点で予言することはないでしょう。
ネットワークは現代のあらゆる企業にとって重要な戦略的資産になっています。新年になっても状況は変わらないどころか、ネットワークの価値、重要性、複雑さはますます高くなるでしょう。IT プロフェッショナルは、状況がどのように変化するかを見極めつつ、すべての不測の事態に備えることが大切です。
それでは、ネットワークと監視分野における5つの主要ポイントについての2020年の展望を記述します。
ネットワークの変化は、ネットワークアーキテクチャの変化を促進します。最近ネットワーク分野において注目されているのは、分散ネットワークへの移行と、それに伴った、ソフトウェア定義の広域ネットワーク(Software-Defined Wide-Area Networking、SD-WAN)への移行の増加です。
SD-WAN は何年も前から存在していましたが、グローバルエンタープライズネットワークへの要求に厳しさが高まった昨年あたりから、高価で柔軟性に欠けるマルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)ネットワークアーキテクチャの代替または補足として採用されることが多くなりました。この傾向は2020年も続き、SD-WAN への移行は加速するでしょう。
クラウドベースのソフトウェア、モバイルデバイスの増加、ネットワークの分散化といった状況に対処する必要性から、多くの企業が MPLS アーキテクチャと連携して動作する SD-WAN の採用に踏み切りました。SD-WAN を使用すると、地理的に遠く離れた企業ネットワークを接続するために必要な物理デバイスの数を減らすと同時に、ネットワークの耐障害性を高めることができます。集中管理されたロールやルールを使用してトラフィックを優先順位付けしたりルート指定したりすることも可能で、アプリケーションパフォーマンスの向上や帯域幅コストの削減につながります。
このすべてを追跡するには、アプリケーションのトラフィックのパスを視覚化できるヒートマップなど、物理インフラストラクチャやトラフィックフローの詳細な視覚的なトポロジを提供できる高度な監視ツールを必要とします。
ここ10年ほどの間にネットワークの分散化が進み、監視ツールも分散化されています。オンプレミスネットワークの監視、クラウドリソースの監視(クラウドプラットフォームごとに異なる組み込みソリューションを使用することも多い)、SaaS ソリューションの監視などを行う様々なツールがあります。事態をより複雑にするのは、これらの異種の監視ツールがシームレスに通信することは期待できず、ネットワークとリソースを、一貫性のある統一された視点からではなく、断片的、断続的な情報を駆使してなんとかつじつまを合わせようと苦労することになります。ですが、ネットワークの分散化が必ずしも分散監視を意味するとは限らず、そうした苦労は、実は避けることができます。
優れた監視ツールには、複数ベンダーのクラウドリソースも、オンプレミスリソースも、1か所から統合的に監視できる適応性があるものがあります。最新の監視ツールは、SaaSアプリケーションのアプリケーションパフォーマンス監視と、オンプレミスネットワークの昔からのSNMPベースの監視を統合しつつ、ハイブリッドのクラウドネットワークをシームレスに監視できます。ハイブリッドクラウドネットワークでクラウド・プロバイダの提供する監視ツールを使おうとすると、どうしても上記のような分散監視、監視ツールの寄せ集めを管理することになりますが、その限界を感じる企業が増えてくると思います。どのようなネットワーク環境であっても、一貫性のある視点でシームレスに可視化し監視できる統合化された集中監視ツールへの需要が高まると予測されます。
次に、過去2年間の予測記事の主力であったものについて言及します。WiFi 6 がネットワーキングを変革するという予測です。この予測が当たらなかったことは、ご承知の通りです。WiFi 6は、2018年から、「ほとんどすぐそこまで来ている」と言われてきましたが、未だに来ていません。しかし、大規模適用に向けてのテクノロジーは徐々に進展しており、いったん到達すれば、多くが変化するはずです。
今日の無線ネットワークは非常に混雑しています。BYOD 革命、モノのインターネットの出現、仕事場所でのデバイスを接続するための「ワイヤレスファースト」アプローチなどはすべて、無線ネットワークへの負担を増大させ、ついにはネットワークのスピードを低下させてしまいます。
802.11ax としても知られる WiFi 6 は、従来の WiFi テクノロジーの4倍のスループットを誇り、スピードと容量が大幅に向上します。さらに、1つのエリアで接続できるデバイスの密度を高めます。
WiFi 6 は、最終的には、オフィスワーカー(混雑したオフィスでデバイスをより確実に接続できるようになります)から、数千の IoT デバイスをサポートする IT 管理者(ずっと少ないアクセスポイントでより多くのデバイスを接続できるようになります)まで、ほとんどすべての無線ワイヤレスユーザーの接続性を大幅に改善します。
このテクノロジーは、ようやく認証に利用できるようになったようです。大規模導入が始まるまでにもう少しだけ待たなければならないかもしれませんが、それほど先のことではないはずです。
WiFi 6 とは異なり、5G は既にここにあります…と言うこともできます、程度ですが。5G のキャリアは、2019年を通して、一部の都市とその近隣地域で限定的な設置を展開しており、2020年には展開のスピードが上がるでしょう。消費者にとっての影響は非常にシンプルです: 5G でスマートフォンの速度とバッテリーの寿命が向上します。
企業では、5G の影響は少し異なります: 新しい IoT アプリケーションや、現在の WAN 接続の代替としての 5G 固定ワイヤレスなどを検討するといった可能性が広がります。5G の企業での展開が今年の注目事項になると思います。
5G 固定ワイヤレスは WAN 接続として便利なオプションです。また、5G ワイヤレステクノロジーを利用すれば、一般的なアクセスをライセンスされた CBRS を介して、独自のプライベート 5G データネットワークをセットアップできます。
ネットワーク管理者にとって、最も重要な機能は、おそらく 5G のネットワークスライシング機能です。ソフトウェア定義のネットワーキングと同じ原理を使用して、5G ネットワークスライシングにより、共有物理インフラストラクチャ上に複数の仮想ネットワークを構築でき、コアネットワークを、機能とパフォーマンスの要件が大幅に異なる様々なユースケースとサービスに分割することができます。
クラウドに移行する企業は増え続けていますが、少なくとも一部のデータとアプリケーションを自社のネットワークとデータセンターに戻す必要があると考え始めた企業も出てきました。実際、IDCのレポートによると、調査した企業の80%が2018年に少なくとも一部のワークロードをパブリッククラウドからオンプレミスに引き戻しました。(2018年の調査の時点で)今後2年以内に、パブリッククラウドアプリケーションの約50%がプライベートクラウドかオンプレミス・インフラストラクチャに移行されるのではないかと予想しています。
この動向の背後にある誘因は、IDC によると、19%がセキュリティ問題を挙げ、パフォーマンス問題とコスト問題がそれに続きそれぞれ14%と12%でした。データのローカリゼーションに厳格なルールを設定する GDPR や CCPA などに対処するための新しいコンプライアンス体制も要因の1つです。
以上、2020年のネットワークと監視分野に関して5つの展望を記述しましたが、ご自身の予測を共有していただける場合は、下のコメント欄にご意見をお寄せください。IPv6、AI、ロボットなど、ここでは触れなかったトピックに関してもご自由に予測してみてください。
Get our latest blog posts delivered in a weekly email.