機械学習は、アプリケーションが、どのデータが重要かを理解し、そのデータを使用して再プログラムする必要なしに意思決定を行う方法を確立する方法です。ただし、それらのアプリケーションはエンドユーザーにとって意味があるようなものになるよう設計する必要があります。
この分野のエキスパートは、2017年秋に出版されたReactive Machine Learning Systems の著者であり、データ科学者、開発者でもあるジェフ・スミス氏です。x.ai のAI設計者として仕事をした後、スミス氏は最近、利用者の代わりに電話をかける AIである John Done を提供するスタートアップ会社、John Done Inc. を創設しました。筆者はスミス氏にインタビューする機会がありましたので、ブログにまとめます。実際のポッドキャスト・インタビューはこちらです。
スミス氏は約10年間にわたってデータサイエンスのアプリケーションを作成する仕事に携わっていました。生命情報学の分野でゲノムデータを推論するソフトウェア・システムを作成した後、スミス氏は、より一般的なデータサイエンスと機械学習の研究へと方向転換しました。
「生物学の問題だけに専念するよりもっと一般的な問題に取り組みたいと考えていたとき、人工知能の父とも称されるベン・ゲーツェル氏と知り合いました。」とスミス氏は話します。AIを使って香港の株式市場を予測するゲーツェル氏のプロジェクトに参加すると、たちまちAIに魅了されました。
「このプロジェクトに参加して、今後10年以内に人工知能を使って様々な本当に洗練されたことが可能になりそうだと、目を見開かされました。」とスミス氏は話します。「それ以来、私はもっとエキサイティングでユニークな機会を探し続けています。参加したくなるような、資金やリソースを注ぎたくなるような、新しい手法で興味深い問題に人工知能技術を適用して問題を扱いやすくするプロジェクトはできないかと。」
スミス氏が人工知能で問題を解決できてしまうといつか自分の仕事がなくなるのでは、と心配する人もいるでしょう。
AIは仕事を奪いますか?
「まあ、心配することはないですね。」とスミス氏は話します。「私がしてきたことは、人の知性を増強するツールの作成です。」たとえば、メールでミーティングのスケジュールをすることを考えてみましょう。これはほとんどの人がそういうことで時間をつぶしたくないと思うような仕事です。それで x.ai で人に代わってそれをするAIを作成しました。
ミーティングのスケジュールだけを毎日やっている人はいないので、このAIが秘書やアシスタントの仕事を奪うことにはなりません。スミス氏は、「作業項目から何らかの雑用を外すことができれば、その担当者の能力を高めることになります。」と話します。
AIを導入した結果として、少額の費用で大きな時間の節約ができ、仕事を整理して集中することができるようになります。これが認知科学のテクノロジーが目指すべきことだとスミス氏は強調します。「人が欲していたこと、テクノロジーで処理した方が適切なことを人の作業から切り離すということを実現することで、人々により効果的な役割を果たしてもらえるようになります。人々が行うのが最善の仕事をできるよう、単純な作業への拘束時間を減らします。」
機械学習とAIの関係は?
機械学習とはデータから学習することを意味します。機械にとっての学習は、基本的にパフォーマンス統計を改善することを意味します。
これまでデータが豊富でなかった多くの分野で、急激に大量のデータを利用できるようになったため、機械学習への注目度は上がってきています。あたかも誰もがポケットにスーパーコンピュータを入れて歩き回っているような状況になっているので、大量のデータが生成され続けます。スミス氏によると、「この状況は、マシンがどういう点で向上していくべきかを明確に定義する絶好の機会です。」
たとえば今聴いている曲に最も近い次のベスト20曲を聴きたいと思えばマシンに推薦させることができます。推薦システムは古典的なAIの問題解決システムに属します。
機械学習は、そのようなレベルを超えて、通常マシンを使用することを考えないようなことにもマシンの力を利用できるようにします。明確な目的がある会話や取引の交渉を実現するために自然言語で会話するようなことも対象になります。
「機械学習とは、人が自身を計測できるようなデータとメトリクスを使って質問を構成し、それを何らかの形で連続的に繰り返すシステムを構築するプロセス全体です。」とスミス氏は話します。
この言い方で頭が混乱するようなら、マシンに多くのデータを与えれば与えるほど、行うように依頼した以上の、より洗練されたことができるようになるシステムを考えてみてください。そう、それが機械学習です。
不適切なデータについてはどうすれば?
不適切なデータの扱い方、もう少し特定した言い方をすれば、適切なデータや不適切なデータがどのようなものであるかをマシンに教えるにはどうすればよいですか?
スミス氏は、「人々は不適切なデータの問題をさまざまな視点から見てきました。」と話します。アドテックのコンテキストでは、スミス氏は、ユーザーデータを収集してユーザーを分類し、特定の集合に分類された人々をターゲットにして広告を出すというリアルタイム・システム、買い物客をプロファイルするAI技術を使ったシステムを構築したことがあります。
「私が遭遇した不適切なデータ特有の問題は、インフラストラクチャ・プロバイダとの統合を通じてバックエンド・サービスに問題が生じたため、膨大なデータを取得・分析できなくなってしまったパートナー統合のエラーに起因していました。文字通り、データを保存することができませんでした。」スミス氏は落胆しましたが、これは、何が正常な動作であるかを判定できるようにし、システムが自己修復するできるようにする方法を模索する動機づけになりました。
また、人は1秒間に1,000回ページをロードすることはできないといった、まったくの「ゴミデータの激流」に見舞われることもあります。そういう場合は、システムに、何かが障害を起こしていると認識させ、システムの中核となるミッションを妨害したり中断したりしないよう障害部分をシステムから切り離す回路遮断器のようなものを装備することが考えられます、とスミス氏は話します。
機械学習でこの複雑性を扱うようになってからわずか2年ほどですが、不適切なデータのような現実世界における複雑性に対処できる能力は、AIの中で最も強力な技術の1つです。スミス氏は、これはシステムデザインのレベルで処理すべき非常に実際的な問題であると言います。1つのアプローチは、リアクティブな機械学習です。
リアクティブ・デザインとは?
「リアクティブと名前がつく空間には、様々なものが重なり合っています。リアクティブ・デザインはそのうちの1つで、ユーザー・インタフェースのパラダイムになります。」とスミス氏は説明します。
もう1つはリアクティブなシステム設計で、ユーザーがAIシステムに対してかなり高い期待を持っているという考え方から来ています。「技術開発者である私たちとサービスの利用者との間で結ばれた契約に存在する暗黙の期待があります。」
したがって、真のリアクティブ・デザインは、優れたシステムがそのような期待を満たすために必要な特性を持っています。たとえば、エラー箇所を切り離す機能。言い換えるなら、ある部分が壊れたときに、的確なリアクションがとれるよう、別の部分でそこに障害があると認知するような、システムに内在する監督ハイアラキー。
そして、レプリケーション。「現代のウェブでは、誰もがある意味で分散システムを構築していると言えます。」とスミス氏は話します。1つのバックエンド・サーバーまでの電話は、すぐに多くのバックエンド・サーバーになり、そのすべてのデータから学習するためにはパイプラインが必要になります。
「私たちは分散システムの世界に住んでいるので、コミュニケートの方法、メッセージのやりとりを構造化する方法を整理する必要があります。」データが複数の場所に常に存在しているという事実は言うまでもありませんが、その事実を効果的に活用して、障害から回復するために何らかのフォールト・トレランスを持たせるためには、リアクティブ・デザインが必要です。
スミス氏は、「リアクティブ・デザインは問題を単純化しすぎず、高度な最新技術の複雑さを取り入れています。」と話します。
機械学習は近未来をどう変える?
スミス氏は John Done に洗濯をさせています。事実として。John Done は、毎週スミス氏の洗濯物を取りに来るよう洗濯屋に電話をし、洗濯が終わったら届けてくれるよう電話します。
「多くの人が見たことのない最大の変化は、自分の陣営にインテリジェントなエージェント、つまり完全なアイデンティティと個性と責任を持つソフトウェアを持てるようになるということです。それは私たちが x.ai で構築したものであり、私が現在 John Done で構築しようとしているものです。」とスミス氏は話します。
「これを行う必要がある」または「それをフォローアップしたい」といった言葉でタスクが表現されれば、インテリジェントなエージェントがそのタスクの一部を実行するようにモデル化することをスミス氏は目指しています。
実際のところ、洗濯についてはAIが全面的に担当しています。
AIに電話で問題を解決させるのは極めて複雑です。電話をかけ、個人的・職業的な生活に関わる複雑な問題を調整し、情報を追跡するのに人間と会話し、(1)答えを得られたかどうか、(2)得た答えが適切なものかどうか、に関して結論に到達できる、会話をする知的エージェントが必要です。
「この種の技術は普遍的になるでしょう。」とスミス氏は話します。そう遠くない将来、耳にヘッドホンをしている人がいたら、音楽を聴いているか誰かと電話で話しているのだろうと推定することはやめるべきです。その人は、優れた人工知能に裏打ちされた口頭コンピューティング・テクノロジーを使って何かを成し遂げようとしているかもしれません。「仕事のある部分をAIに割り当て、どんな結果になったのかという報告を聞くことができるようになるでしょう。」
雑事やその他のベーシックな仕事を引き受けてもらえるようになっていることに気がつくときが来るでしょう。AIは何を達成すべきかを理解しているので、自律的なインテリジェント・エージェントは与えられた仕事をすべて完了します。
スミス氏は、「するべきことのリストから嫌なものを取り除いて、やりたいこと、人として価値があることに集中できる状況を想像すると、非常にエキサイティングな未来だと思います。」と話します。「ボットに床を掃除したり、洗濯したり、といったことをやってもらいましょう。」
いずれにしても、言語技術と機械学習の大きな進歩はそのような未来を現実にするでしょう。
スミス氏をフォローするには、Twitter @jeffksmithjrか、ブログ Medium.com があります。