5G は、第四次産業革命とも呼ばれるインダストリー4.0の前身と見なされることも多いのですが、喧伝されていることが本当なら、これまでは帯域幅の不足のために制限されていた、または信頼性が低かったことへのイノベーションが可能になります。最大 10Gbps の速度が通信会社によって約束されていますが、実際の使用シナリオをまだ経験していないので、単なる推測の域を超えるものではありません。
ハイバンドスペクトラム(6GHz+)や mmWave(ミリ波)に関する記事をいくつも読んだのですが、使用すると最大 10Gbps の速度が可能になるので、この機能は他よりも推進されているようです。健康上や安全上のリスクを懸念する記事は減少し、もうそれらに言及する記事は見られなくなりました。結局のところ、より速いブロードバンドを利用できるメリットに比べて、あり得るかもしれない長期的な健康リスクは些末なことなのかもしれません。
ただし、PCMag の筆頭モバイルアナリストかつ、Fastest Mobile Networks プロジェクトの責任者である Sascha Segan 氏が指摘するように、mmWave と 5G は、イコールではありません。
「ミリ波についてはいろいろ取りざたされていますが、より長いレンジとより良いウォールペネトレーションを持つサブ6GHz(そしてサブ1GHz さえも)の 5G もあるでしょう。“ 5G” が “ミリ波” だけを意味すると考えるのは、よくある間違いです。」
遍在する 10Gbps ブロードバンドの夢は、結局のところ実現しないのでしょうか…
「mmWave が全地球的に遍在するという状況を実現させるのは不可能です。mmWave ホットスポット、サブ 6GHz の都市部、サブ 1GHz の拡散周辺地帯が存在することになるでしょう。 LTE のデュアルコネクティビティや Wi-Fi 上の 5G にも留意すべきです。5G をマルチバンドサービスとして考えていない企業は、全体像を見ずにほんの一部に注目しているだけです。」と Segan 氏は述べています。
5G の広域スペクトラム
5G サービスが開始されることで、4G(家庭用ゲームのプレイヤー向け)の場合と同じように、様々なサービスレベルが存在することになります。最高速度を提供する mmWave は、スタジアムや大勢の人が集まるビルなどの場所(または前述の Segan 氏の言葉を使うなら mmWave ホットスポット)に限定され、都市部のコミュニティ向けにはミッドバンド(4G インフラストラクチャを利用)、大都市圏外の人々向けにはローバンドのオプション(これも既存のネットワークインフラストラクチャをベースとして)が主流になるでしょう。
実際的には、ホットスポットのユーザーは最大 10Gbps の速度を利用でき、都市部のミッドバンドユーザーは毎秒最大 1Gbps、拡散周辺地帯のユーザーは最も遅いレベル、ピークで毎秒 100Mbps ということになります。このようなバリエーションはあるものの、これらの速度はすべて現在利用可能な速度から大幅に向上しています。スピードを最大にするための技術的要件として、数百メートル毎にセル(ブースターまたはリピーター)が必要になるので、カバレッジエリアを犠牲にせざるを得ず、 mmWave がどこででも得られるようになるという夢は近未来的には実現しないでしょう。壁や雨さえもサービスに影響を与える可能性があり、大規模な展開は現実的ではありません。
もし、現在の地域において 4G が実現されていなかったり、特定スポットだけに限定的だったりする場合は、5G でも 4G のモバイルカバレッジの状況とほとんど異なることはないでしょう。Opensignal の2018年版 4G レポートは、国別の 4G の可用性とスピードをチェックすることができます。
真の普遍的なカバレッジは、後に衛星を使ったソリューションが5Gネットワークに統合されてからの話になります。
5G の現実とコスト
5G のための準備が必要な企業は、ロケーション、帯域幅の要件、ハードウェアに基づいて、何を実行すればいいのかを研究しています。通信キャリアに支払うコストはどうなるのでしょうか。
Segan 氏は次のように述べています。「Verizon は当初、5G を 4G のデータ無制限プランの値段に10ドルを上乗せした金額でサービスすることを考えていました。」
ところが、3つの「無制限プラン」には、残念ながら実際には多くの制限が含まれています。同じことが他の通信事業者にも当てはまりますが、たいていは急激な速度低下が起こる前にデータ上限(最高 75Gb などといった)が適用されます。したがって、この制限が踏襲されるなら、 mmWave テクノロジで 10Gbps のピークデータ使用を想定すると、毎月の制限は7.5秒で使い切ってしまうことになります。
短い 5G のデモを体験して興奮した人がいるかもしれません。データ上限のために1カ月全体にわたるサービスが期待できないのなら、スムーズなビデオストリーミングを享受できることをここまで宣伝することはないはずだという気もします。テクノロジーの利点を最大限に活用することになれば、データの上限は上がることになると思います。
5G 統合を検討している企業は、事前に準備する必要がありますが、今すぐに準備を整える必要はありません。
「2019年に起きることはすべてを変えるでしょうが、2019年のうちにはそれほど変わることはありません。2021年の初めまで5Gが広範に行きわたることやメジャーな消費者用デバイスが普及することはないでしょう。本当に 5G のインパクトを見るのは2023年か2024年になるでしょう。だとしても、今準備を始めていなかったら、2024年に起きる変化には間に合わないでしょう。」と、PCMag の Segan 氏は述べています。
最初の検討事項は、5G 対応のモバイル機器、携帯電話、ファブレットなどです。新しいデバイスは必要です。
「5G の状況は急速に変わっていきます。初期の消費者用デバイスは高価であり、後から加わる機能にはアクセスできません。遅れをとりたくはないけれど、デバイスは3年間は持ち続けたいと望む人にとっては、どのタイミングで購入するのが適切かを見極めることは難しいかもしれません。」と Segan 氏は話します。
あまり焦らないで、初期に見つかる問題が解決されるのを待ってから購入を考えた方が賢明かもしれません。
その他に考慮すべきハードウェアには、5G を Wi-Fi に接続するための 5G ルーターが含まれます。
地域にサービスする通信事業者とその 5G 事業計画を調査してください。5G 時代のセキュリティや BYOD、そしてゲストが Wi-Fi にアクセスできるようにすることを検討してください。5G を利用することでメリットがある特定の事業分野はありますか?新サービス、製品開発、社内外の業務プロセス改善など、多方面から考える必要があります。リスクアセスメントを実施し、考えられるすべての選択肢を検討するために社員のブレインストーミングセッションを行うのもいい案です。
最後にまとめると、イノベーションの新しい可能性をもたらす 5G の到来は歓迎されるべきことですが、新たな課題も生まれます。通信事業者が銅線とファイバーのネットワークを放棄することは考えにくいため、この分野でのさらなる統合が期待されます。主な利点は、企業や社員が本当により高速なブロードバンドスピードを獲得できることです。勤務形態やコミュニケーション手法も広がりを見せるでしょう。ただし、通信事業者が、いわゆる無制限プランに付随するデータ上限を現実的な(利用可能なより広い帯域幅に合わせた)レベルに設定する場合に限ります。当面の間 5G に関連してすべきことは、適切な注意を払って、5G がもたらす可能性のある優位性(および問題点)への理解を深めておくことでしょう。ソリューションの統合は、初期の問題が早期導入者によって特定され解決された後になってからがいいでしょう。